皆様におかれましては、ますますご発展のこととお喜び申しあげます。
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弊社では、愛媛県発注の土砂災害防止法関連の基礎調査業務のうち、急傾斜地と土石流の区域設定業務を実施しています。今回は、その実施内容について、ご紹介させていただきます。
1.基礎調査実施の背景
平成26年(2014年)8月、広島市で大規模な土砂災害が発生しました。国では土砂災害防止法を改定するとともに、各都道府県に対し土砂災害警戒区域等の指定のための基礎調査の実施などの対策を急ぐよう求め、平成31年度までに基礎調査を完了させることになりました。
2.目的
基礎調査を実施することで、①土砂災害の恐れのある区域について危険周知 ②警戒避難体制の整備 ③住宅等の新規立地の抑制、建築物の構造規制等のソフト対策を推進します。
【急傾斜地の公示図書例 一部を抜粋】
【土石流の公示図書例 一部を抜粋】
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3.急傾斜地の区域設定条件(下記の概要図参照)
イエローゾーン(危害の恐れのある土地:警戒区域)
①傾斜度が30°以上で高さが5m以上の土地の区域 ②急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域 ③急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域(ただし、地形状況により明らかに、土石等が到達しない範囲は除去する)
レッドゾーン(著しい危害の恐れのある土地:特別警戒区域)
「危害の恐れのある土地」のうち、土石流により建築物に作用すると想定される力が、建築物の耐力を上回る土地の区域
4.土石流の区域設定条件(下記の概要図参照)
イエローゾーン(危害の恐れのある土地:警戒区域)
①基準地点(土石流が広がり始めると想定される地点)と地盤勾配2°となる境界によって囲まれた範囲 ②明らかに土石等の到達しない範囲は除去する(河川、海、尾根など)
レッドゾーン(著しい危害の恐れのある土地:特別警戒区域)
「危害の恐れのある土地」のうち、土石流により建築物に作用すると想定される力が、建築物の耐力を上回る土地の区域
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基礎調査が完了し、指定の行われた区域の周知については、すべての都道府県で、警戒区域等の指定の公示およびインターネットでの公開が行われています。
弊社では、今後も引き続き基礎調査業務に取り組むことによって、皆様の生命・身体を土砂災害から守る対策の推進に貢献するよう努めてまいります。
以上
補足
【急傾斜地の区域設定条件概要図】 【土石流の区域設定条件概要図】
図は、『土砂災害防止法の概要』 国土交通省 より
【ソフト対策】
イエローゾーン(土砂災害警戒区域)では、
警戒避難体制の整備
土砂災害から生命を守るため、災害情報の伝達や避難が速くできるように地域防災計画に定められ、警戒避難体制の整備を図り、ハザードマップなどの配布が講じられます。
レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)ではさらに、
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特定開発行為に対する許可制
住宅宅地分譲や災害時要援護者関連施設の建築のための開発行為については、自然現象(急傾斜地の崩壊、土石流)に応じて、土砂災害を防止するための対策工事が必要になります。
建築物の構造規制
新築・増築・改築に着手する前に、建築物の構造が土石等の力に耐えられるかどうか(例えばRC構造の場合に単配筋構造が複配筋構造になる。高さは2階まで対応が必要となるなど)を確認します。作用する力の大きさや範囲、土石等の堆積高さは公示図書に示されています。
建築物の移転等の勧告
崩壊等が発生した場合に、土石等によって生じる力に耐えられない建築物の所有者、管理者または占有者に対しては、都道府県知事が安全な区域に移転するなどの措置について勧告できることになっています。勧告は、自主的な改善措置を促すもので、強制力はありません。
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図は、『土砂災害防止法の概要』 国土交通省 より
ハード対策である急傾斜地崩壊防止施設(擁壁工など)・砂防設備(砂防堰堤など)はそれぞれ事業の根拠となる法律(急傾斜地法、砂防法)に基づいて整備されています。これらの法律と警戒区域等を指定する根拠となる土砂災害防止法は、法的側面からは連動していません。しかし、危険箇所は非常に多くあり、すべての危険箇所に対して短期間に整備を完了できないのが実状です。そこで、ハード対策(対策工事)とは切り離し、土砂災害防止法により「警戒区域等」を指定することで、ソフト対策を推進しています。したがって、警戒区域等に指定されたことで、事業が優先的に実施されるということではありません。
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※PDFファイルが別ウインドウで開きます。 |
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